
Zucksの海外アプリ広告担当者 村上が国外のアプリ情報をお伝えする連載「海外Appジャーナル」。この記事から数回に分けて、世界最大級のゲーム展示会ChinaJoy 2017の様子をご紹介します。
世界三大ゲームショウに数えられる「ChinaJoy」とは?
ChinaJoyとはアメリカで開催される「GDC」や、「東京ゲームショウ」などに並ぶ世界最大級のゲーム展示会。
今年で15年目を迎える歴史あるゲームショウで、2016年の入場者は約27万人、会場の広さは12万㎡。30カ国のゲームメーカーが出展し、4000本以上のタイトルが出展される特大級の展示会です。
ChinaJoyの会場は、to Bとto Cのブースに分けられ、to Bブースではコンシューマーゲームをはじめ、ゲームアプリを開発するメーカーのブースが設置されていました。一方、to Cのブースは多数のコスプレイヤーが参加する、オタクカルチャーの祭典でもあります。
今年は7月26〜30日にかけて上海で開催されたChinaJoyですが、夏の上海は平均気温が35度前後と高く会場の熱気も相当なもの。私が滞在した時も会場は蒸し暑く、別名「サウナジョイ」と呼ばれることが頷ける暑さでした。
ランキングを軒並み独占、企業買収を経て世界一の市場になった中国アプリマーケット

今までは参入が難しくあまり注目されることのなかった中国アプリ市場ですが、その市場は世界最大。アプリ数で見ると全世界の25%のシェアを獲得し、2016年にはアメリカの市場を抜いています(アメリカのシェアは20%、日本は18%)。
また、アプリストアのランキングでも上位10タイトル中、8タイトルが中国資本のメーカーが開発したアプリです。その中でも勢いがある「King of Glory(王者栄耀)」は、全世界で5000万DAUという驚くべき数字を叩き出しています。
これがどれくらいの数字かを説明する比較対象として、国内のニュースアプリの「グノシー」を挙げてみましょう。現在、同アプリは約500万MAU。グノシーがこのユーザー数で十分マネタイズできていることを考えると、1日に5000万のユーザーがプレイするKing of Gloryの凄さがお分かりいただけるかと思います。
この勢いを作り出しているのは、中国企業による海外メーカーの買収です。たとえば、農業ゲーム「Hey Day」や、日本でもヒットしている「クラッシュ・オブ・クラン」を開発したディベロッパーSupercellは、2016年に中国の大手IT企業テンセントに買収されました。
そのほかにも、中国の大手化学メーカー「金科娯楽文化」は、2016年に約1200億円を使って、アプリ開発会社「Outfit7」を買収しています(Outfit7は、全世界で何十億もDLされている「トーキング・トム」シリーズをリリースしているスロベニアの企業です)。
激しい買収の動きをはじめ、近年では、Unityが中国進出をサポートするサービスを開始し、中国市場は進出も容易になりました。そのため、中国マーケットは、いま最も動きのある市場と言えるかもしれません。
◎Unityの中国進出サポートについて、詳しくはこちら
【Unite 2017 Tokyoレポート Vol.1】講演「中国でAndroidアプリを出す!Xiaomiストアでのアプリリリース、収益化のためにできること」
⇒ https://zucks-magazine.jp/post/unite-2017-01
中国進出はパブリッシャーがカギを握る?

大きな動きを見せ、進出に興味を持たれている方も多いと思われる中国市場ですが、中国でアプリをリリースするためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。
実は、中国では海外産アプリのリリースに規制がかけられ、海外産アプリはほとんど出回っていない状態です。
中国で海外ディベロッパーがアプリをリリースするためには、中国政府に申請を行い、ライセンスを取得する必要があります。しかし、このライセンスの取得は難しく、中国に進出しようとしている企業の多くが現地法人と提携してアプリをリリースしているようです。
これらの提携先となる企業はパブリッシャーと呼ばれ、海外企業からアプリの版権を預かり(または買い取り)、中国市場でプロモーションやマーケィングを行って、一定のマージンを開発側に支払うビジネスを行っています。
もし中国進出を狙うのであれば、自社単体でリリースすることにこだわらず、パブリッシャーと提携することも検討してみましょう。
と言いますのも、日本やアメリカと異なり、中国のアプリストアは特殊な事情を抱えています。それが大小さまざまなアプリストアの存在です。中国には大手IT企業や携帯端末のメーカー、通信会社などが運営する数百のアプリストアがあり、プロモーションには中国国内のコネクションや、独特な市場環境に対応するノウハウが必要になるでしょう。
このように、他国の市場と比べて特殊な環境ではありますが、多数の潜在ユーザーが存在する中国市場は進出のメリットも大きいはずです。ぜひ進出を検討されてみてはいかがでしょうか。
爆発的な成長は「高い開発力×資本力×大量のユーザー」からつくられた
今回の訪問では、世界のアプリマーケットで存在感を増していく中国企業の勢いを肌で感じることができました。
もともと中国は、コンシューマーゲームが発売されてもすぐに海賊版が登場する市場。そのため、ゲーム開発は主にアプリが中心の国でした。その背景から培われた開発力に、経済成長による資本力と、他国に比べて圧倒的に多い潜在ユーザー数が加わったことで、中国アプリ市場は世界一のアプリマーケットになれたのではないでしょうか。
次回からは、China Joyを通して見えた、中国市場のインディゲームや、マネタイズの特徴、IPタイトルなどについて解説していきたいと思います。