
Zucksの海外アプリ広告担当者 村上が国外のアプリ情報をお伝えする連載「海外Appジャーナル」。この記事では、世界最大級のゲーム展示会ChinaJoy 2017を視察した際に村上が見た、中国アプリ市場のトレンドやプロモーション方法などをレポートしています。
今回のテーマは「IPタイトル」。IPとは「アニメやゲームのキャラクターなどの知的財産」のことで、有名なキャラクターを使った「キャラクターゲーム」などが該当します。
今回ChinaJoyを視察した時に、多くの中国デベロッパーが日本のIPを使ったゲームアプリを製作したいと話していました。この記事では、その理由と背景に迫ります。
中国デベロッパーが喉から手が出るほど欲しがる、日本産IP

7月26〜30日にかけて上海で行われた「ChinaJoy」で、私は数百のアプリ関係者と商談を行いました。中国企業との商談の中で頻繁に言われたのが「日本のIPを紹介してくれ」という言葉です。
日本は、ドラえもんや、ハローキティ、ジャンプ漫画のキャラクター、任天堂をはじめとしたゲームキャラクターなど、有名なIPの保有数で言えば世界で一二を争う国。一方の中国は、アニメ・漫画・ゲームなどのサブカルチャーの分野で世界的に有名なIPを保有していません。
IPには一定数のファンが付いているため、アプリを出せばファンがダウンロードしてくれることも多く、新規タイトルに比べてマネタイズがしやすい商品です。アジア圏だけでなくヨーロッパやアメリカなどで高い知名度を誇る日本のIPは、世界の市場で一定の収益が見込めるでしょう。
すでに資金や技術力がある中国企業は、更なるビジネスチャンスを狙うために日本のIPを使いたがっているのです。
IP取得に向け、中国企業はすでに動き出している

この流れの中で、中国企業による日本産IPの取得があちらこちらで進んでいます。
近年で一番大きな事例は2015年に起きた、中国のオンラインゲーム企業37Games(三七互娱)による、日本企業「SNKプレイモア」の買収です。
SNKプレイモアは、「ザ・キング・オブ・ファイターズ」「サムライスピリッツ」「餓狼伝説」などの格闘ゲームや、アクションゲーム「メタルスラッグ」など、世界的にヒットしたゲームで有名な企業。買収金額は約79.2億円で、買収後にリリースされた「メタルスラッグ・ディフェンス」は約2900万以上のDLを記録しています。
そのほかの事例として、中国の成都に拠点を置く「成都格闘科技有限会社(通称:91アクト)」がセガゲームスと提携し、ライトノベルレーベル「電撃文庫」のキャラクターを使用した2D格闘ゲーム「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION モバイル版(仮称)」を開発していました。
中国のモバイルゲームメーカー「OURPALM」もまた、ボーカロイド「初音ミク」や漫画「BLEACH」、「ワンパンマン」のモバイルゲーム開発権を取得するなど、中国企業による日本産IPを使ったゲーム開発が積極的に進められています。

中国企業はプロモーションにも強みを持つ企業が多く、プロモーターの「cheetah mobile」と組んだ放置系ゲーム「アビスリウム」がヒットするなど、中国企業と提携することでヒットを飛ばしたタイトルがいくつも誕生しました。
日本には、世界的に知名度はありながら上手にマネタイズできていないIPが数多く眠っています。中国企業側はそれらのIPを活用すれば、世界的にヒットするタイトルが開発できると算段をつけているのではないでしょうか。
国内産IP育成に向けて、動き出す中国企業

国外IPの活用だけでなく、中国企業側も新規タイトルを作成し、自国産IPを育成しようと動き出しています。
代表的なものは、全世界で2億DLを突破し、日本のセールスランキングでも上位に食い込んでいるRPG「陰陽師(開発:NetEase Games)」や、全世界3000万DLを記録したアクションゲーム「崩壊学園シリーズ(開発:miHoYo)」など。
これらはアジア市場で人気が高い、日本アニメ風の「萌え絵」が使われたゲームで、中国国内でグラフィックやゲームを制作し、日本の声優を起用して制作されています。演出やグラフィックのクオリティも高く、日本企業が作ったものだと考えていたユーザーも多いのではないでしょうか。
今まで、中国の漫画やアニメ、ゲームなどは安かろう悪かろうというイメージで見られてきました。しかし、近年では画力や演出などのクオリティが高いものも多いのです。近年リリースされた中国産ゲームアプリの中から、知名度の高いIPが生まれる未来はそう遠くないかもしれません。
日本産IPを海外に発信するなら今がチャンス

日本は大量かつ良質なIPを蓄積していて、質のいいゲームやアニメ、漫画などのコンテンツを生産できる国です。この資産を活かさない手はありません。
中国のアプリストアを見ると、ジャンプ漫画の「NARITO」「ドラゴンボール」「ワンピース」「BREACH」や、PCゲーム出身の「フェイト」などの日本産IPを使用したアプリがランクインしています。ChinaJoyで見かけたブースでは、「ウルトラマン」や「ドラえもん」「ハローキティ」など、おなじみのキャラクターを使用したタイトルの姿を見ることができました。
お金の匂いに敏感な中国の企業が注目していることを考えても。日本のIPは、眠れる金鉱と言っても間違いはないでしょう。
版権の取得など参入障壁はありますが、もしIPタイトルを作ることができるのならば、海外ローカライズを行えば海外でのDL数も伸びるはず。
先述したように、中国はコンテンツ制作のノウハウを着々と蓄え、日本産IPの取得も積極的に進めています。コンテンツ制作において日本に分がある今、国内産IPを使ったゲームアプリを海外に発信してみませんか?