Zucksの海外アプリ広告担当者 村上が、国外のアプリ情報をお伝えする連載「海外Appジャーナル」。今回のテーマは、「ロシア圏のゲームアプリ市場」です。
ロシア圏のゲームアプリ市場を調査するため、ロシア圏のゲームカンファレンス「White Nights」に参加してきました。White Nightsは、ロシアの企業が主に参加している、ゲームディベロッパー向けカンファレンスです。
現地で仕入れた情報をもとに、ロシア圏でのアプリ市場の動向や広告トレンド、カンファレンスの様子などをレポートします。
注記:White Nightsは、厳密には「スラブ語圏」のカンファレンスですが、今回は「ロシア圏」とまとめさせていただいております。
ロシア市場の成長と海外展開。White Nightsに注目が集まるワケ

ロシアのモバイル広告会社Zorka Mobiが発表した「モバイルゲームレポートinロシア 2017」から抜粋。ロシアのアプリゲーム市場が大きさがわかる
White Nightsに注目が集まる理由は3つ。1つ目は、ロシア産のゲームアプリが世界のトップセールスに肩を並べるようになり、ロシア国内のゲーム市場が成長している点。
2つ目は、市場の成長にともない、ロシアのゲームがグローバルで流行しだしている点。
そして3つ目は、ロシア経済の主要企業が他の経済圏と異なっており、海外企業がロシアに進出するノウハウを持っていない点です。ロシアでは、世界的なプラットフォーマーであるGoogleやFacebookがシェアを取れておらず、それぞれロシアのIT企業に取って代わられています。

検索エンジンは、Googleの代わりに「Yandex(ヤンデックス)」のシェアが圧倒的です。SNSは、FacebookやTwitterではなく、Odnaklassniki(アドナクラースニキ)」と「VK」の2社でシェアの8割を占めています。これらの3社に、メール会社「Mail.ru」を加えた4社が、ロシアの主なIT企業になります。
GoogleやFacebook、Twitterなどを主な広告プラットフォームとして扱っている国の企業は、ロシア市場の知識やノウハウを持っておらず、どんな情報でも求めている状態です。
こうした背景から、WHITE NIGHTSはロシア圏のゲーム市場と海外企業とのマッチングを大きな目的として開催されています。
White Nightsが注目される理由まとめ
- ロシアのアプリ市場が成長しているから
- ロシアのゲーム企業が積極的に海外進出をはじめたから
- 海外企業が、ロシア市場に参入したいから
ディベロッパーもカンファレンスも「世界目線」

今回参加したカンファレンスは、チェコの首都プラハで開催されていたので、ロシアの会社だけでなく東欧の出展企業も多くありました。
私はこれまでGDCやChinaJoyなど世界各地のゲームカンファレンスに参加してきましたが、東欧のゲーム会社の方とお話する機会はありませんでした。
今回、はじめて東欧のディベロッパーの方々とお話させていただいただき、ハングリー精神を持ってゲーム開発に取り組まれていることがわかりました。
東欧企業が制作するゲームアプリは、リリース前から多言語への対応を視野に入れています。リリース時にはローカル言語はもちろん、英語や主要な西欧語、さらにアジアの中国語などもサポート。「世界に打って出よう」という気概がアプリから感じられるのが好印象でした。
White Nightsへの参加者は1000名程度とされていますが、日本からの参加は私たちだけ。そのおかげか、「日本の話を聞きたい」と積極的に話を聞いてくださる方も多く、有意義な時間を過ごせました。
ディベロッパーの方々との会話は、英語でも十分伝わります。私たちは、念のため現地語を話せる通訳の方に同行していただきましたが、視察だけなら英語だけで問題ありません。
White Nightsに限らず、中国のChinaJoyなどでも、ゲーム開発に携わっている方々は英語を話せる方がほとんど。しかし、商談といった深い話をする場合や、現地の方と仲良くなりたい場合、現地語は必要になるでしょう。
ロシア圏のアプリゲーム企業は、どの広告会社を使って広告収益をあげているか?

ドイツの広告事業者Fyber。ヨーロッパ圏で特に人気が高いが、その他の地域でも認知度は高い
いくつかのインディー会社の方に「どの広告事業者を利用していますか」と質問したところ、最も人気だったのがドイツの広告会社「Fyber」でした。
日本ではGoogle広告が人気ですが、ロシア圏ではFyberが圧倒的に人気のようです。アジアのゲームショウでもFyberを利用している企業はありましたが、ごく少数でした。おそらくロシア圏では、「近くて言葉が通じやすい」という、地理的かつ言語的な要因でFyberがシェアを取っているようです。
また、Fyberほど多くありませんでしたが、アメリカの広告会社「APPODEAL」を利用している企業もいくつかありました。企業名はよく聞くものの、実際の利用者を見つけたのは今回がはじめて。APPODEALはアメリカの会社ですが、ロシアやスペインに拠点を持っているので、ロシア市場においては他の企業よりも優位に立っているのでしょう。
世界の例に漏れず、動画はプロモーション先として人気

動画リワード企業として、世界的に有名なAdColonyも出展している
ロシアにおいて広告出稿先として人気なのが、IT領域を席巻している主要4社。さらに、現地で一般的なコミュニケーションアプリ「Viber」と「WhatsApp」も同様に人気です。
そして、動画リワードは世界的に流行しており、ロシア圏でも強い影響力があるようです。カンファレンスでは、大手企業の「AdColony」が大きなブースを設けており、世界的な流行の波をロシアでも確かに感じました。
絶対に損はしない。ロシア圏市場を知る絶好のカンファレンス
White Nightsは入場料が6万円ほどかかり、さらに渡航費も含めると多少値が張るかもしれません。しかし、カンファレンスの規模が小さい分、出展企業の方とゆっくり時間を取って話せますし、年に複数回開催されているので、足繁く通えば仲良くなるのも簡単でしょう。
なにより、何度もご紹介しているロシアの主要広告会社「Yandex」「Odnaklassniki」「VK」「Mail.ru」も出展しているので、ロシア市場の情報を得る絶好の機会です。
次のWhite Nightsは、2018年6月28〜29日にサンクトペテルブルグで開催されます。ロシア圏のアプリ市場に興味のある方は、ぜひ足を運んでみることをおすすめします。
ロシア圏のゲーム市場やWhite Nightsに興味がある方は、ぜひ村上とお話しましょう!

村上
Zucksにおいて、海外企業全般(広告主、広告会社、媒体)を担当。海外のおもしろいネタを常に探し中。気軽に連絡ください!