
Zucks海外アプリ広告担当の私、村上が海外のアプリ情報をお伝えする連載「海外Appジャーナル」。
第一回では海外で流行している「ライブ動画アプリ」についてお話しましたが、第二回は、カジュアルゲームに特化した世界最大級のカンファレンス「Casual Connect Singapore(カジュアルコネクトシンガポール)2017」で受賞したアプリについてご紹介します。
Casual Connect Singaporeとは?

2017年5月16〜18日にシンガポールで行われた「Casual Connect Singapore」は、カジュアルゲームに特化した世界最大規模のカンファレンスです。
Casual Connectは、アジア・アメリカ・ヨーロッパなどの地域に分かれて年数回、世界各地で行われ、アジアでは主にシンガポールで行われるもの。会場にはインディゲームを中心に1200ほどのブースが並び、多くの来場者で賑わうほか、その年に注目されたアプリがアワードとして表彰されます。
2017年のアワードは以下10種類が用意され、120のディベロッパーチームがノミネートをしました。
・優れた音楽のタイトルに贈られる「BEST GAME AUDIO」
・優れたゲームデザインのタイトルに贈られる「BEST GAME DESIGN」
・優れたゲームアートのタイトルに贈られる「BEST GAME ART」
・優れたナレーションのタイトルに贈られる「BEST GAME NARRATIVE」
・マルチプレイヤー型のタイトルに贈られる「BEST MULTI PLAYER GAME」
・知育系ゲームのタイトルに贈られる「BEST KIDS&FAMILY GAME」
・モバイル端末のタイトルに贈られる「BEST MOBILE GAME」
・VRタイトルに贈られる「BEST VR GAME」
・革新的なシステムのタイトルに贈られる「MOST INNOVATIVE GAME」
・来場者が受賞者を選ぶ「BEST IN SHOW:AUDIENCE CHOICE」
東京ゲームショウなどのゲームショウでもアワードが設けられていますが、Casual Connectのように細かいカテゴリーは他には例を見ません。
今回はアワードを受賞したタイトルの中から、特に注目したいものを3つご紹介します。
ゲームデザインやプロモーション手法など、注目したい3つの受賞アプリ
◎BEST MOBILE GAME受賞「Sara Is Missing」
Casual Connectで最優秀賞に等しいアワード「BEST MOBILE GAME」。このアワードを受賞したのは、マレーシアのゲーム会社「KAIGAN GAMES(カイガンゲームス)」がリリースした「Sara Is Missing」です。
アルファベットの頭文字を並べ、通称「SIM」と呼ばれるこのゲームは謎解きゲームのひとつで、ストーリーの大筋は失踪した女性が残したスマートフォンを手掛かりに女性を探す、というもの。
ゲーム内のスマホを操作しながら、残されたチャットの履歴やカメラロールの写真をヒントに事件の核心に迫ります。とはいえ、言葉だけでは分かりづらいので、ぜひ一度動画をご覧ください。
このタイトルで注目したいのは徹底したリアリティです。スマホに残された写真や動画は全て女性モデルを起用した実写で、アプリもまるで実在するもののようにUIやアイコンが作り込まれています。このトップ画像もアプリの一部なんです。

ゲームをプレイしていると、他人の携帯電話を盗み見ているようなスリリングな体験が味わえ、レビューも星4.5と高評価。
英語版しかリリースされていませんが、アイデアと雰囲気づくりがとても参考になり、App Store とGoogle Play両方でダウンロードできますので、ディベロッパーの方にはぜひプレイしていただきたいタイトルです。
日本語にローカライズすれば確実にヒットするであろうタイトルなので、このゲームを参考に新しいタイトルを開発してみてはいかがでしょうか。
ちなみにこのゲームは日本では知名度が低く、ディベロッパーの方々に聞いてみてもほとんどの方が知らないとおっしゃっていました。もし開発を始めるのであれば、今がチャンスですよ。
◎MOST INNOVATIVE GAME受賞「Stifled」
最も革新的なゲームに贈られるMOST INNOVATIVE GAMEを受賞した「Stifled(スタイフルド)」は、シンガポールのGATTI GAMES(ガッティゲームス)が開発するVRホラーアドベンチャーゲームです。
「Stifled」はPSVRのタイトルでアプリゲームではありませんが、大変ユニークなシステムを採用しているので取り上げてみました。
このゲームは、一人称視点で敵の潜む暗闇の中を進んで行くもの。暗闇なので周りは見えませんが、ヘッドマウントに付いたマイクに声をかけると音の反響によって周囲にある物体の輪郭が浮かび上がります。
ゲームを進行するためには声を発しなければいけませんが、音を出しすぎると暗闇に潜む敵(赤ちゃんのような見た目と声で、とても怖いんです……)に見つかり、追いつかれるとゲームオーバーになってしまいます。
ゲームを進めるためには音を出して周りを確認しなければいけませんが、敵が現れたら声を殺さなければいけないゲームシステムが秀逸です。このゲームのタイトルになっている「Stifled」は、「窒息」という意味を持つ言葉。VRによる没入感からまさに窒息しそうな緊張感を味わえるでしょう。
2016年に、はApple製以外のアプリでもSiriとの連携が可能になりました。マイクと音という新要素は、面白いタイトルを生み出す可能性を持っているのではないでしょうか。
◎BEST IN SHOW:AUDIENCE CHOICE受賞「Dragon UP! Match 2 Hatch」
Casual Connect来場者に選ばれたアプリが受賞するアワードBEST IN SHOWを受賞したのは、「Dragon UP! Match 2 Hatch(ドラゴンアップマッチ2ハッチ)」でした。
このタイトルは典型的なパズルゲームで、カナダのディベロッパー、「East Side Games(イーストサイドゲームス)」が開発したもの。
East Side Gamesは、高品質なアプリを提供する開発者としてGoogle Playに評価された「トップデベロッパー」の称号を持ち、世界中でヒットするカジュアルゲームを作るゲームメーカーです。
このタイトルは、ゲームシステムなどから見てあまり目新しいものではありませんが、アワードを受賞できたのはプロモーションの方法に長けていたからだと感じています。
Casual Connect会場ではブースに端末が設置され、そこでゲームを体験可能。来場者はその中から受賞するタイトルを選びますが、これでは体験できる人数が限られてしまいます。
そこで、East Side Gamesは、カンファレンス開催前にβ版を公開しました。
この方法であれば、ダウンロードすればゲームを楽しめるので、事前プレイをすることができますし、ブースにいなくても遊ぶことができます。このプロモーションによって票が集まり、受賞につながりました。
ディベロッパーさまの中には、アワードへのノミネートを検討している方もいらっしゃると思います。そのカンファレンスに来場者が投票するアワードがある場合は、East Side Gamesがとった手法を参考にすれば票も集めやすくなるのではないでしょうか。
アワードはヒットの起点になる?
このほかに、Casual Connect Singapore 2017では7つのアワードが贈られました。気になる方は「Casual Connect Singapore(カジュアルコネクトシンガポール)2017」のWebサイトでご確認ください。
実は、このカンファレンスでは、日本の会社は1社もエントリーしていませんでした。
Casual Connectに限らず、世界各国で多種多様なカンファレンスが開かれ、アワードが贈られていますが、これらは受賞することでプロモーションになりますし、ヒットの起点を作ることもできます。
参加することで開発のネタを発見したり、ディベロッパー同士の横のつながりを作ったりすることもできますので、ぜひアワードに応募してみてはいかがでしょうか。
次回Casual Connectは2018年に香港で開催予定。次はどのようなタイトルが受賞するのか、今から楽しみなところです。

村上
Zucksにおいて、海外企業全般(広告主、広告会社、媒体)を担当。海外のおもしろいネタを常に探し中。気軽に連絡ください!