
6月7〜9日に幕張メッセでアプリの祭典「APPS JAPAN」が開催され、アプリマーケティングに関わる講演会が多数開催されました。
この記事では、アプリ分析プラットフォーム「AppApe」を運営するフラー株式会社が「APPS JAPAN」で行ったセミナー「2017年アプリ市場のこれから~O2Oアプリ最前線、今年取り入れるべき◯◯という施策とは?~」の様子をレポートします。
このセミナーのテーマになったO2Oアプリとは企業が実店舗に送客を試みるためのアプリです。ユーザーは割引クーポンの配布や、商品購入に応じて加算されるポイントなどの機能が利用できます。
この講演には休眠ユーザーを復帰させ、アプリのアクティブユーザー数を増やすヒントが隠されていました。
アクティブユーザーを増やすためには「休眠ユーザーの復帰」が必須
O2Oアプリをリリースしている企業はマクドナルドやUNIQLO、ファミレスチェーンのガストなどがあり、読者のみなさんも一度は利用したことがあるのではないでしょうか。

この講演で登壇者となったフラー株式会社のエヴァンジェリスト、桉田洋平さんは「今年取り入れるべきO2Oアプリの施策は、『休眠ユーザーの復帰』」だと話します。
※休眠ユーザーとは、アプリをダウンロードした後に長らく起動していない方のこと
なぜそう言えるのか?フラー株式会社の持つ大量のデータをもとに、その理由を紐解いていきましょう。
◎理由その①:マーケットの飽和で新規ユーザーの獲得が難しくなった

講演で最初に紹介されたのは、「Googleストアに存在する総アプリ数」「ユーザーの平均所持アプリ数」「ユーザーの1日の平均利用アプリ数」という3つのデータです。
2014年から2016年にかけて、「Googleストアの総アプリ数」は130%増。「1ユーザーごとの平均所持アプリ数」は60⇒70個、「1日の平均利用アプリ数」は24⇒29個にそれぞれ増加しました。(どちらも21%増)
2016年にかけてアプリの総数が大きく増えた一方で、ユーザーの「アプリの所持数」と「1日の利用アプリ数」はさほど伸びていません。このデータから読み取れることは、マーケットの競争が激しくなり新規ユーザーの獲得が難しくなってきていること。
桉田さんが休眠ユーザーの復帰を重要視しているのは、マーケットが飽和した状態で新規ユーザーを狙うより、端末で眠らせているアプリを再起動してもらう方が、労力が少ないという仮説を立てたからです。
◎理由その②:ユーザー端末内のアプリは、入れ替わりが激しくなっている

次に発表されたデータは、2014年から2016年にかけての「1ヶ月の平均的なユーザーのインストール数・アンインストール数」。
「1ヶ月の平均的なユーザーのインストール数」は1.4 ⇒ 4.7に増加していますが、「1ヶ月の平均的なユーザーのアンインストール数」も1.4 ⇒ 4.6に増えました。
この数字を見ると、ユーザーの端末内にあるアプリの入れ替わりが激しくなったことがわかります。おそらく、インストール後に数回しか起動されずアンインストールされていくアプリも数多くあるのでしょう。
アンインストールのサイクルが早くなっている中でアプリが端末に残り続けるためには、アクティブユーザーを増やし、ユーザーを飽きさせない工夫やイベントが必要です。その施策は休眠ユーザーの復帰にもつながります。
「文字数制限解除」のイベントで、主要SNSトップになったTwitter

休眠ユーザーをアクティブユーザーに変えるためにはどのような施策を打てば良いのでしょうか?そのヒントになるのが、SNSアプリのトレンドでした。
紹介されたデータは、「Twitter」「Facebook」「Instagram」の3つのアプリの月間ユーザー数の動向。いずれも数多くのユーザーが利用しているアプリですが、注目したいのが2016年9月に起きたTwitterのアクティブユーザーの増加です。
この時に起きたのが、Twitterの文字数制限の解除でした。この仕様変更はニュースなどで大きく話題になり、休眠ユーザーが再びアプリを起動するきっかけになったのでしょう。休眠ユーザーの一部がライトユーザーに転向していることがデータで記されました。

※上の写真で「②」の枠で囲まれている箇所が休眠ユーザーの数です。グラフでは薄い水色で表示された「休眠ユーザー」が減り、黄緑色で表示される「ライトユーザー」の数が増えているのがわかります。
「文字数の制限解除」というイベントを起こすことで、Twitterは月間ユーザー数を伸ばし、結果的にFacebookを抜いて3つのSNSアプリの中で最もアクティブユーザーを抱えるアプリになったのです。
O2Oアプリトップのマクドナルド、高いアクティブ率の理由とは?
ここからO2Oアプリの事例をヒントに、休眠ユーザーを復帰させるための具体的施策について説明していきます。

020アプリの数は2014年から2016年にかけて43%増加しており、他アプリカテゴリーと同じく競争は激化しています(Google Play Storeデータから)。
この中で、高いアクティブユーザー数を維持しているO2Oアプリが、マクドナルドのアプリです。その数字は「月間利用者数」が約260万、「所持ユーザー数」は約440万と大きく他アプリを引き離しています。なぜマクドナルドはO2Oアプリの中で大きな成功を収めることができたのでしょうか?
成功の理由を分析するために比較の対象になったのは「マクドナルド」「モスバーガー」「ロッテリア」の3つのアプリ。ともにファーストフード業界のアプリで、利用ユーザーの男女比や年齢の利用者構成に大きな違いはありません。
その中で、マクドナルドだけ休眠率(1ヶ月にアプリを1回も使っていないユーザーの割合)が低く、60%のユーザーが毎月1回はアプリを起動しています。

マクドナルドは、アプリをリリースする前からクーポンの配布を始めていたこと、店舗数が多くアプリを利用する機会が多いことなど、もともとのアドバンテージは大きかったのですが、アプリの機能を「クーポン機能」に特化させたことが成功の要因と言えるでしょう。
「マクドナルド」「モスバーガー」「ロッテリア」のアプリを比較してみると、休眠率の高い「モスバーガー」は、クーポン利用を前面に押し出しておらず、店舗検索やゲームコンテンツなど、ユーザーとのコミュニケーションを主眼に作られています。
一方「マクドナルド」「ロッテリア」のアプリはクーポンによる割引機能をメインに作られており、ユーザーとのコミュニケーションはサブコンテンツとしての位置付けになっています。
割引は、アプリ利用者にとってわかりやすいユーザーメリットです。マクドナルドのアプリはそのメリットに特化したことで、高い月間利用者数を維持できているのではないでしょうか。(「マクドナルド」と「ロッテリア」の月間利用者数に開きがあるのは、店舗数の違いによるものでしょう。)
このほかにアクティブユーザーを増やす施策として、アプリのプッシュ通知によるキャンペーンや新メニューの告知など、頻繁にイベントを用意してユーザーと接点を作っていることが、月間利用者数を伸ばす一因になっています。
休眠ユーザー復帰のカギは、「アプリを起動する理由づくり」にあり
今回の講演で紹介されたTwitterやマクドナルドの施策を見ると、休眠ユーザーの復帰には、ユーザーニーズに向き合い機能を特化させたことや、仕様変更などのイベントをおこなう事が効果的だとわかりました。
「現代人は忙しい」という話はあらゆるところで聞くことができます。仕事や育児で忙しいのはもちろん、コンテンツはアプリ以外にもテレビや書籍など様々なものがあふれているなか、「ユーザーがアプリを起動する理由」を考え抜き、実装することが休眠ユーザーの復帰につながるのではないでしょうか。