株式会社Zucksにて広告営業ガールをしている”あやんせ”が、色々なアプリデベロッパーを訪ねるコーナー「あやんせが行く!」。
第3回目となる今回は、「脱出ゲーム 「脱出4コマ・アンタルチカ」」「脱出ゲーム バネーナ」などの脱出ゲームで知られるデベロッパー・浅瀬石 大貴さんにアイデアを形にする方法やASOについて伺いました!
今回お話を伺った人

医療介護系の人材サービス会社でのWebマーケティング職から独立してフリーランスの開発者に。日本のスマホアプリ市場の黎明期からアプリ開発に携わる。現在は、Web系の開発案件も多数こなす。
「脱出ゲーム」ならダウンロード数が稼げる。開発者としてのアピールに最適!
— まず、浅瀬石さんが個人アカウントでリリースなさっている5つのアプリ作品を一言で表現すると何かを教えてください!
浅瀬石:え、全部まとめてですか?う〜ん、強いていうと「シャレオツ系」ですかね…。
— 確かに!みんな「シャレオツ」なアプリですよね!
浅瀬石:あ!「系」はキチンと付けてくださいね。あくまで「シャレオツ系」。「シャレオツ」だけで止めるとほんとに痛い人になっちゃうんで(笑)。
— 気をつけます(笑)。そんな「シャレオツ系」なアプリ開発を浅瀬石さんはいつ頃から始めたんですか?
浅瀬石:2009年です。個人アカウント以外でリリースしている分も含めると、携わったアプリの累計は100種類は超えていますね。
— その100本というのは受託開発などで携わったアプリも含めてということでしょうか?
浅瀬石:そうです。受託開発などを含む数です。
— なるほど!個人アカウントで出された5本は脱出ゲームが多いですね。そもそもなぜ「脱出ゲーム」を作ろうと思ったんですか?
浅瀬石:ダウンロード数が稼げるという一点です。それと、3Dのデザイナーに協力してもらえたのも大きいかな、と。
— ダウンロード数が稼げた脱出ゲームの売上はどうですか?
浅瀬石:アプリ自体からの売上はそれほどでもないです。ただ、ダウンロード数が伸びると目に触れてもらえますよね。それでアプリから発生する売上で稼ぐより、アプリが僕自身の開発者としての宣伝になって、名前が知られるようになったんです。「こういうの作れますよー。私にお仕事、ちょうだい!」っていう感じです(笑)。
— なるほどー。それで、開発に携わったアプリの本数が急増したんですか?
浅瀬石:結構断わりましたけどね(笑)。脱出ゲームの場合だと、依頼されても作り込むと工数がかかるので、全部は受けきれないからです。
— それは確かに、全部は引き受けられないですね(笑)。
脱出ゲームはゴールをまず決める!ゴールが決まればパパッと進む
— 工数のお話が出たのでお伺いしたい質問があります。題材がバナナって時点でエッジが立ちまくっていた「脱出ゲーム バネーナ」の開発はどのくらいの期間がかかりましたか?
浅瀬石:絵が4か月。プログラムは2.5か月ぐらいです。絵の枚数が半端なく多くて、絵を描くのにすごく時間がかかりました。
— 絵だけで4ヶ月!?アイデアやストーリー作りの方が時間がかかりそうな印象がありますがどうなんでしょう?
浅瀬石:アイデアとストーリーの作り込みは、全体の仕事時間からすると大したことないです。プログラムとデザインの実作業と比べると全然少ない。アイデアもストーリーも、しょせん紙に書くだけですから(笑)。
— 「どこに次のバナナを隠そうか」みたいなギミックを考えるのには、時間はかからないんですか?
浅瀬石:かかりませんね。作業量としては圧倒的に少ないです。パパッと浮かぶ部分が多いんですけど、でも最後はだいぶ苦しみます。
— 「どういうところでフィナーレにしようかな」という苦しみですか?
浅瀬石:そうです。ちなみに「最後の部分」を実は「最初」に考えます。「ゴール」を最初に決めるのは、アイデアを企画にする時の原則。やはりゴールを決めないと迷走してしまうので。
— ゴールを決めた後、制作はどういう流れで進めるのでしょうか?
浅瀬石:脱出ゲーム作るときは、部屋のイメージと部屋に置いておく物をまず考えます。次に、その仕掛けを考えるって感じ。物を決めてからの、仕掛けを考えるのが自分は早いと思います。
スマホゲームは「ゲーム」にしたら負け。ゲームでない「ゲーム」がウケる!
— 「脱出ゲーム バネーナ」はバナナにひかれて取っ付きやすいですけど、結構難しいです。私、かなり苦戦しました(汗)。
浅瀬石:難しいですね。本当は簡単にしたほうがいいのですが。
— でも、簡単にしすぎちゃうと、ゲームをすぐクリアされますよね。アプリのライフタイムが短くなりそうですよね。。
浅瀬石:結論から言うと、簡単にしたほうがいいです。脱出ゲームをやり慣れているユーザーでも、難し過ぎるとすぐに離脱する可能性があります。他方、脱出ゲームが大好きなコアな人たちは簡単だと納得はしなくても、結局やるんですよね(笑)。
この二つの理由があるから脱出ゲームは簡単すぎても問題ないんです。むしろ、難易度を下げることがダウンロード数を伸ばすコツなんです。だから「簡単すぎるくらいにすべき」と言っても良いかもしれません。
— どのくらい簡単にすればよいのでしょう?難易度を一番簡単な1から一番難しい10までだとしたら、どのくらいの難易度がいいんですか?
浅瀬石:1じゃないですかね(笑)。難易度を一番簡単な1にして、あとは「解けた感」をいかに作ってあげるかだと思います。
スマホアプリはどんどんライトになってます。ライトにしきっても全然止まんない。それで全然オッケーな感じになっています。「脱出ゲーム」に限らず「スマホゲーム」って「ゲーム」という言葉が付いてますけど、「ゲーム」として考えないほうがいいと思います。
もっと言えば「スマホゲーム」は「ゲーム」にしたら負けなんです、きっと。
— 「ゲーム」でない「ゲーム」がウケる?
浅瀬石:そうです。あくまで暇つぶしなんです。「ゲーム」という言葉の概念がもう変わりきったかもしれないですね。
— 「時間を作って、わざわざやるゲーム」っていうより「ちょっと電車でヒマ」っていう時にやるイメージですかね。ダウンロード数を伸ばすコツは『難易度を下げる』ということですね!
脱出ゲームのASO対策、実はたった2つでOK!
— 脱出ゲームを作る理由は、ダウンロード数が伸びやすいからだとおっしゃっていましたが、具体的にはどのような理由があるのでしょうか?
浅瀬石:広告を打たなくても、自然にランキングが上がるというのも大きいです。プロモーションをかけずに確実にランキングを上げるとなると、脱出ゲームしかないです。
— 確かに、脱出ゲーム以外、たとえば放置ゲームを普通に作っても、ランキングが自然に上がることはめったにないですよね。
浅瀬石:上がる可能性は限りなく低いですね。
— 脱出ゲームが、アプリストアで自然に無料総合ランキングに入る確率はどのくらいですか?
浅瀬石:無料総合ランキングの150位以内に脱出ゲームが入る確率でいうとほぼ100%という気がします。ある程度ちゃんと作ればという条件付きですが。
ちゃんと作るというのは「難易度を落として、一般的な脱出ゲームの難易度の範囲から出ない」「容量を増やし過ぎない」という味です。
— 容量を増やし過ぎないことも大切なんですね。
浅瀬石:でも、僕の脱出ゲームには容量が大きいゲームがあってですね(笑)。「脱出4コマ・アンタルチカ」は100Mを超えちゃいました。100Mを超えると、App Storeの仕様でWi-Fi環境が無いとダウンロードできません。無料総合ランキング150位以内をまるで保てなかったです(笑)。
肌感覚として、アプリの容量が50Mを超えるとインストール数は下がると思いますね。
— アプリ容量を50M以下にして、難易度も落とせば「脱出ゲーム」は確実に150位以内に入るというのは、ASO対策もしっかりされているということですか?
浅瀬石:いえ、特に特別な対策はしていません。アプリ名に「脱出ゲーム」って付けておけばOKというわかりやすいASO対策です(笑)。
— ASO対策はそれだけでランキングが上がってくるものなのですか?
浅瀬石:あとは見た目もある程度、脱出ゲームっぽければいいですね。意外と中身も重要だと思います。あまり適当に作ると、やっぱり上がらないですから。
とにかく脱出ゲームのASOのポイントは、『タイトルに脱出ゲームと入れること』だと思います。
–意外とシンプルなんですね!何か脱出ゲームに関して特有の傾向はありますか?
浅瀬石:3つの傾向がありますね。
【傾向1】複数のアプリを出しているアカウントだとASO対策の効果が早く出る
【傾向2】アプリストア内検索での流入は数年に渡って続く
【傾向3】実はLINEなどのメッセージアプリでの口コミも大きく影響している模様
— なるほど!一つずつ詳しくお伺いさせて下さい。3つの傾向のうち、まず【傾向1】について教えてください!
浅瀬石:ASO対策の効果でアプリストア内でのランキングが上がるのは通常、リリース後1週間がピークです。ところが、複数の脱出ゲームをアプリストアで出していると、ピークがもうちょっと早くなるんです。
— どういうことですか?
浅瀬石:多くのアプリのランキングサイトで、脱出ゲームやいろんな開発者の動きを見てると、脱出ゲームを複数出してるアカウントは伸びが早いのです、明らかに。
— 複数の脱出ゲームを出していると、脱出ゲームの界隈ではある程度一定のファンが付く。だから、ダウンロードが伸びてランキングも上がるのが早いという事でしょうか?
浅瀬石:そうですね。他のアプリと違って、脱出ゲームはファン層の熱量が高いんです。アプリストアで、脱出ゲームカテゴリをリリース日の順で見て、アプリを発掘してる脱出ゲームファンが確実にいますね。
— えーっ!マジですか!
浅瀬石:脱出ゲームは、リリース初日から結構ダウンロード数が伸びる理由がそうでないと説明できないんです(笑)。
— リリースした瞬間からから大事という事なんですね!次の【傾向2】について教えてください。
浅瀬石:アプリストア内検索での流入は、リリース後何年間もある程度のボリュームがあるんです。他のアプリよりやっぱりいいですよ。
— それは美味しいですね!やはり『脱出ゲーム』というワードは強いんですね。次の【傾向3】についてはどうでしょう?
浅瀬石:口コミウェイトが、脱出ゲームでは大きいと思うんです。ソーシャルでの口コミ、リアルでの口コミ、両方の口コミですね。ただ、ソーシャルでの口コミは、検索では出てこないところ、例えばLINEでのやり取りとかですね。
というのも、ツイッターではアプリ名で検索すれば出てくるんですけど、ツイッターだけだと数が合わないんです。
— クローズなLINEなどのメッセージアプリから口コミが広がってダウンロード数が増えるということですか?
浅瀬石:ソーシャルで拡散みたいなのは、なんのアプリでも最初はそうだと思います。SNSでいろいろアップされ始めるのはLINEなどでの口コミの後だなって感じですね。
アイデアやコンセプトを考える時間。それが開発者にとって一番のハッピー
— 最後にズバリお聞きします!「開発者にとってハッピー」って浅瀬石さんにとって何ですか?
浅瀬石:アイデアやコンセプトを考える時が一番ハッピーだと思います。開発者に限らず、皆さんもそうだと思うんですけど。
— そうですね。私もそういう事は大好きです!
浅瀬石:あとは、リリース時は嬉しいですね。「終わったー!」みたいな(笑)。こう考えると、普通の仕事とあんまり変わらないかもしれません。開発以外のモノづくりも同じでしょうね。
— 開発者としての自分をアピールできるのがダウンロード数が伸びやすい脱出ゲーム。ダウンロード数をしっかり伸ばすなら、難易度を下げて、タイトルに「脱出」と入れてASO対策をする…予想外の事実がたくさんわかってよかったです!本日はありがとうございました!

渋谷で働くIT女子。メディアコンサルタントとしてデベロッパーさんのお力になれるよう日々奔走中。ハロウィンでもやっぱり海が好き。
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