株式会社Zucksにて広告営業ガールをしている”あやんせ”が、色々なアプリデベロッパーを訪ねるコーナー「あやんせが行く!」。
第2回目となる今回は、「アクション作ろう。ピコピコメーカーEX」「僕の彼女は浮気なんかしない」などのカジュアルゲーム、ノベルゲームで大ヒットを連発されている福岡のデベロッパー「グローバルギア」さんにお話を伺うべく福岡へ行ってきました!
今回お話を伺った人

とみー 氏
株式会社グローバルギアのデザイナー。社長としっかりと情報共有し、社内情報に精通。趣味は、実益を兼ねた「様々なアプリを楽しむこと」。
フラットな組織とホワイトボードへのネタ書き出し。ここからカジュアルゲームは生まれる!

— まずは会社について教えてください!
とみー:会社としては、今は15人体制です。基本はプログラマーとデザイナーの各1名でひとつのアプリを作っています。全社員で15名ぐらいです。特に、プロデューサーやディレクターと呼ばれる人はいないですし、今後もそういった役職の方がうちに来ることはないと思います。
— えー!!仕切る人とかいないんですか!?
とみー:そうなんです。社長がいて、上司がいて、プロデューサーがいて、デザイナーの私がいて…みたいなピラミッドではありません。横一列な感じ。トップダウンでの仕事がないのです。これが、働きやすい理由なのかなと思います。
でも、そういう仕事のやり方をしないと作るアプリがお固いアプリにきっとなりますよね。ソーシャルゲームなどは、大量にお金も使うし、時間もかけて修正するからいいけれど、カジュアルゲームの開発は時間との勝負なので、横一列で目線が合っているのが良いと思っています。
— 横一列だと、企画は誰が担当するのでしょう?
とみー:みんなです。ホワイトボードに思いついたネタをみんなで書いていくんです。
— じゃあ、企画が常に蓄積されていく感じなんですね?
とみー:そうですね。 ホワイトボード以外にも、企画アイデアの管理がシステム化してあるんです。日頃、遊んだアプリのどこが面白かったのかをシステムに登録しておいて、誰でも観られるようにしてあります。その面白かった点を自社のアプリ開発の参考にしていきます。
開発はActionScriptでカジュアルゲームの製作スピードを最大化!
— 開発言語は何ですか?
とみー:Flashに使用される開発言語のActionScriptを使っています。開発言語としてはあまり使われてないですけれど、開発スピードがダントツで速いんです。ただパフォーマンスは悪いので、重たいゲームや、すごい3Dグラフィックスを使ったソーシャルゲームとかだと処理落ちしちゃいます。カクカクな感じ(笑)。でもカジュアルゲームなら、全然問題ありません。
とにかく開発スピードを上げるならActionScript一択です。社長も社内のエンジニアも口を揃えて言っています。
— ActionScriptを用いるのは、グローバルギアさんと他1社さんくらいしか聞いたことないです。普通は各社さん、SwiftやJavaなどの言語や、Unityなどの開発プラットフォームでアプリ開発をしていますよね。
とみー:どこに重きを置いてるかではないでしょうか?プログラマ目線ならFlashとか使わなくていいんですけど、ゲームってアニメーションのかたまりじゃないですか。Flashは、元々アニメーションを作るソフトなので、開発が早いだけでなく、クオリティ面でもダントツに優秀なんですよね。
開発は、アニメーションにプログラムを組み込んでいく感じです。プログラマーと、デザイナーの私が文字通り一緒に作っていくんです。
だから、プログラマーとデザイナーが同じ開発環境というのがいいんです。他の会社さんの話を聞くと、アニメーション作成ツールでデザイナーがアニメーションを作って、それを見ながらプログラマーがプログラムを書いて、一緒の動きになるように真似して作り直してるわけです。それを、プログラムに取り込む…。なんだか無駄なことしてるっぽい感じがします。
— なるほど!無駄なく速い開発ができるのがActionScriptの強みなんですね。ここで貴社の横並び体制が生きていますね、この開発方法ははじめて聞きました!
「流行らなさそうなアプリ」は完成していてもリリースしない!
— シナリオ系のアプリがグローバルギアさんは強いなという印象があります。
とみー:最近、そうですね。
— 今、ライフタイムが長いというか、長く遊んでくれるシナリオゲームが人気な印象あります!シナリオは誰が書いてるんですか?
とみー:シナリオライターがいるのではなく、社内の1人のデザイナーなんです。その人が小説とか書くのが好きで、サスペンスとかダーク系の物語を書くのが、大好きなんですよ(笑)。
— じゃあシナリオゲーム製作は、たまたまシナリオを書ける人がいたからはじめたって感じですか?
とみー:そうなんです。ちなみに、その人に見てもらってわたしもシナリオ製作に挑戦したアプリが、『好きになったら負け。』です。自分でいうのも何ですが、手が遅くて結構時間かかってしまいました(笑)。
— すごーーーーい!その人に習ってとみーさんもシナリオ書き始めたんですね!『好きになったら負け。』もそうですが、貴社にヒットアプリが多い理由はなんでしょう?
とみー:私たち社員が盛り上がりながら作るからかな、という気がしています。忙しいときはシーンとしてるけど、騒がしいときは超〜騒がしいですよ。
— 楽しんでる感じなんですね!「これ流行るよ、イケるよ!」という感じで盛り上がるんですか?
とみー:そうです、それです(笑)。作ってるときに「これ絶対ヒットするな」と思ったならヒットしますね、やっぱり。逆に、「これだめだな」って感じのアプリがヒットすることはないです。
「このアプリ、リリースしない!」と社長が判断してリリースしなかったアプリが大量にあります。完成状態なのに面白くないからという理由だけで。
— えー折角つくったのにもったいない!「一応、リリースしとこう」とはならないんですか?
とみー:以前は作ったアプリは全てリリースしてたんですけど、今はリリースしないですね。最近は、AppStoreでもGooglePlayでも、ユーザーを誘導しないとリリースしても誰にも気づいてもらえません。だから、導線を入れなければならないんです。「ダメそうなアプリ」のためにその実装工数をかけるのはもったいなくて…。
— そこに時間を使うなら他に回すということですね?
とみー:そうですね。あとは、グローバルギアのブランディングへの影響もあります。クソゲーと思われて、他のアプリも遊んでくれなくなることは避けたいので。
— 自前のネットワークから送客する既存のユーザーはどれくらい動いてくれるものなんですか?
とみー:1回に数千インストールくらいです。AppStoreだとゲームカテゴリのランキングにギリギリ載ったりします。そこからどれだけ上がるかが勝負です。
— 数千人のファンが動いてくれるとは心強いですね!
とみー:けれどたまに、ランキング上がらないアプリもあります。上がらなかったらそのまま放っておきますけどね(笑)。ユーザーの皆さんは賢いから、アイコンやスクリーンショットを変えてごまかそうとしても、ごまかしきれないんです。
— どういうことですか?
とみー:ダウンロードするまでユーザーはどんなゲームかわからないじゃないですか。面白いかどうか。それなのにダウンロードさえしないんです。アイコンとかスクリーンショットで面白そうに見せようとしても、やっぱり上がらない。
— ユーザーの目は厳しいんですね。
とみー:不思議ですよね。ダウンロードしなければ面白さはわからないはずなのに。クソゲーはやっぱりダウンロードされないんです(笑)。
だから、アイコンやスクショに力を入れるべき、とおっしゃられている会社さんもありますよね。でもそれは違うんじゃないかなと私たちは考えています。
— ではどうするのがいいのでしょうか?
とみー:ただ、面白いゲームを作ればいいんじゃないでしょうか。
でも、面白くないゲームを作ってるから、アイコンやスクショでごまかそうとしちゃう。そこに時間がかかってるんです。自分たちもそうなんですけど(笑)
— なるほどーーー。
とみー:アプリのタイトルがすぐに思いつくかどうかが大事だと、社長はよく言っています。テーマや企画ができるじゃないですか。でも、「タイトルどうしよう」と悩んだり「いいのが思い浮かばない」ときは、だいたいもうクソゲー(笑)。
面白いゲームはそれに合うタイトルがすぐに思いつくというのは、デザイナーの私としても納得感があります。そうした「すぐに思いついたタイトル」だと、アイコンやスクリーンショットなどもスグに連想して全部ピーンと来てつながります。
— すぐに浮かんだタイトルとはどれですか?
とみー:『好きになったら負け』です。最初にタイトルが決まって「いいね!」と。デザイナーとしてもラクでした。
女子会で横にいる女のコが「好きになったら負けだよね、へへへ」とかしゃべっていて。いいこと言ってるなーと思って採用しました(笑)。「好きになったら負け」という言葉は私たち女性社員の間でもウケが良かったんです。「あるある」という意味でも。
— ムチャクチャ面白いですね!
データ分析はしない。同じゲームを作るはずはないから
— 累計で何本のアプリをグローバルギアさんは出しているんですか?
とみー:2016年10月現在で70本くらいです。累計ダウンロード数は、1,000万くらいじゃないでしょうか。
— 累計1,000万ダウンロード!
とみー:『僕の彼女は浮気なんかしない』が150万ダウンロードくらい。これだけみると、1,000万どころじゃなさそうですけど、そこまでいかないアプリもあります。1アプリ10万ダウンロードとして、70本だと700万ダウンロードですからね。
— ダウンロード数だけではなくグローバルギアのカジュアルゲームは滞在時間が長いように見えます。実際、どうなのでしょう?
とみー:グローバルギアではデータをあまり見てないんです。データを見ている暇があったら作るわ、というのがグローバルギア。社長がデータ分析嫌いなんですよ。データを分析して何の意味あんのって(笑)
集計が大好き、データ分析が大好きな人っていると思うんです。でも、うちの社長は「それ、次に生かせるデータなの?」って言っていて。
例えばあるゲームのある部分でユーザーが離脱してるってわかっても、そのゲームを、次は作らないですよね。だから、データ分析をしないんです。
もちろん、ソーシャルゲームだったら、ひとつのアプリをアップデートし続けたりするから意味のあることだと思いますけど…。私たちが作っているのは、あくまでカジュアルゲームなので。
— フラットな組織とActionScriptがカジュアルゲーム作りのポイント。流行らなさそうと感じたアプリは完成してもリリースしないし、データ分析もしないという潔さも大事なのですね。もっとお話を聞かせてください!
※グローバルギアさんの新作「ワケあり同居」、是非理想のカレを育ててみてください!
(後編へ続く)

あやんせ
渋谷で働くIT女子。メディアコンサルタントとしてデベロッパーさんのお力になれるよう日々奔走中。秋でもやっぱり海が好き。twitterアカウント