(中央:代表取締役 松田和彬さん、左:取締役CTO 永石裕樹さん、右:プロデューサー田辺康樹さん)
本記事は、株式会社Zucksにて広告営業ガールをしている”あやんせ”が、色々なアプリデベロッパーさんにお話を伺うコーナーとなっております。
記念すべき第1回目は、多くのヒットアプリを世に出されているGOODROIDさんにインタビューをさせていただきました。
今回お話を伺った人

松田和彬 氏
株式会社GOODROID 代表取締役社長 兼 株式会社サイバーエージェント 技術戦略室 室長。「もやしびと」「私のヒモ男」「おそ松さんのニートスゴロクぶらり旅」など色んなアプリを生み出した仕掛け人。

永石裕樹 氏
株式会社GOODROID 取締役CTO。2014年10月よりGOODROIDのCTOを勤める。以前Youtuberを目指していた。通称ミカエル。

田辺康樹 氏
株式会社GOODROID プロデューサー。以前お笑い芸人を目指していた。趣味はお酒と競馬。最近ビキニガールズバーに通っていて彼女募集中。
変人が自由に振る舞うカオスな会社GOODROID
— 早速ですが、GOODROIDがどういう会社なのか、自己紹介といっしょに教えてください!
永石:開発を統括しているCTOの永石です。うちの会社はズバリ「カオス」です!変な人しかいない(笑)。
— (笑)。ちなみに一番、変な人ってどなたですか?
松田:みんな同じぐらい変です。ベクトルが違うだけでやっぱり変。
田辺:みんな同じくらい変なんて言わないでくださいー。それでは、プロデューサーのわたくし田辺はGOODROIDを顔芸で表現します(笑)。
— えーと(笑)。
田辺:こういう顔芸をインタビューでやっても許されるということ。つまり、「自由」なんです(笑)。
— その「自由」が「カオス」に繋がるんですね。
松田:CEOの松田です。カオスと自由を取り仕切っています(笑)。働き方も、発想や事業内容も、すべて自由ってのはあてはまりますね。
会社のビジョンは、「圧倒的に面白いサービス」を作ること。それは会社のウェブサイトにも書いてます。2人から出た、カオスと自由というキーワードは、この「圧倒的に面白いサービス」に必要なものなんですね。
— そうした圧倒的に面白いサービスを作る会社から生まれた「もやししゃちょー」、かなりの大ヒットだったのではないでしょうか?
松田:今年出たカジュアルゲームでは、トップクラスの売り上げなんじゃないですかね。
田辺:8月31日に、50万ダウンロードを突破しました。
— すごーーい!そんなヒット作のアイデアを生み出す秘訣をこっそり教えてください。
雑な粒度でもアイデアを量産し、エッジの立ち具合で選ぶ
松田:まずは、面白い企画を募るスプレッドシートへ、思いついたアイデアをいつでも・なんでも書こうというルールにしています。そこから拾い出すパターンがあります。あとは、スプレッドシートに書いてあるアイデアとIP(版権)を掛け合わせて作るというパターンもありますね。
例えば「私のヒモ男~イケメン拾いました~(以下「ヒモ男」)」も、スプレッドシートに「ヒモ男」って書いてあったことがきっかけで作られました。
— 「ヒモ男」というフレーズだけから生まれたんですか?
田辺:はい、「ヒモ男」って書いてあっただけです(笑)。
— どういった基準で企画にGOサインを出されるのですか?
松田:決め手は、インパクトですかね。ゲーム性よりも、まずはアイデアにエッジが立っているかを僕は見ています。例えば普通に「高校を舞台にイケメン相手の恋愛ゲーム」なんて書いたら却下ですよね。
— なるほど、普通ですね。
松田:そこに例えば、登場キャラが全員オネェですって書いてあったら即GOです(笑)。どういうエッジが立ってるかっていうのをすごく見ている。凡庸なアイデアはダメ。意味がわかんなすぎてもだめですけど。
イベントで仕掛けることでアプリのライフタイムを伸ばす
— そうして生まれたアプリで、1番息が長いのはどのアプリですか?
松田:息が長いのは「ヒモ男」で、200~300万円くらいずっと安定して月次の売上があります。
— 今でも新規ユーザーも入ってきてるということでしょうか。たしかリリースからもうすぐ1年ですよね?
田辺:安定して入ってますね。Android版が新規をとれてます。女の子向けのタイトルがヒットした時とか、GooglePlayの「あなたへのおすすめ」に「ヒモ男」がたぶん出るんですよね。
— 息の長さ、継続率の維持でいうと、アプリ内のイベントも大切かと思います。イベント告知のタイミングに、何かコツはありますか?
田辺:「もやししゃちょー」の場合、基本的にイベントを行う時って、YouTuberさんの動画も一緒にアップされるんですよ。で、動画が一番見られやすい時間が19時なんですね。
だから、19時に動画がアップされて、19時にイベントを開始させて、通知もそのタイミングで打つという流れになりますね。
— イベントは何人で回しているんですか?
田辺:週に1回のアップデートを3人でやってます。新規追加するもやしのデザインに関しては、デザイナーにお願いをして、2〜3個追加してもらいます。
そのもやしデザインをエンジニアに渡してアップデートを依頼します。アプリがアップデートされたら、「もやししゃちょー」リリース元であるUUUMに属しているYouTuberさんの動画のタイミングをヒアリングしつつ、僕のほうで通知を設定していく感じです。
人月でいうと、0.03人月くらいじゃないですか。
— 0.03!?最小限の工数で継続率が上がるんだったら、めちゃくちゃいいですね!
松田:そうですね。イベントの仕組みも、なるべく最初から入れるようにします。アプリのリリース後は、プロデューサーの設定とイラストの追加くらいでほとんど回していける状態にしておきます。
永石: 「もやししゃちょー」に関してはイベントを永続的にやっていくことが最初からわかってたんで、イベントのバナーは必要ないようにして、元から入っているリソースを参照するような作りにしました。
— 開発段階から少ないリソースでイベントを開催できるようにしておくのですね!ちなみに、カジュアルゲームでもイベントって有効なのですか?
田辺:もちろん有効です。「秒速で1億円 貢ぐ男」では、リリースして1〜2か月間ぐらいは、毎週やってました。
効果としては、新規を獲得できるというよりも既存ユーザのリテンションが上がるという感じでした。イベントを行う土日になるとログインするユーザーが増えるんです。
— アプリのリリース後、どれぐらいまでイベントはするのでしょう?
永石: 効果があるなっていう場合は永続的にやってます。逆に、あんまり意味ない、となった場合はサクッとやめることもあります。
松田:「もやしびと」は、なぜか29日の肉もやしのイベントだけずっとやってます。でも、何回か設定するの忘れたとかもあったり。翌月の3日ごろになって「やべ、先月の29日やってないわ」って。
— イベントを忘れていたことを思い出したあと、どうしたんですか?
松田:「もやしびと」の公式Twitterで「設定するの忘れたわ」とつぶやきました(笑)。
— ポジティブにキャラに還元するのがすごいですね(笑)
松田:ミスをポジティブに捉えてキャラがツイートするという挽回の仕方は、他のデベロッパーの皆さんにもぜひ参考にしてほしいですね。すごく効果的ですから。(笑)
— 「もやしびと」のツイートって普段から面白いですよね。コツはありますか?
松田:実は、公式アカウントのツイートに関しては、トンマナを厳しく言ってます。「そんなセリフ、もやし言わないよ」みたいな。
最初、リア充みたいな書き込みをもやしアカウントでやっちゃってて…。「もやしってさ、もっとなんか陰湿でジメジメしたこと言うんじゃなかったっけ」という話し合いして、キャラを修正していきます。そうして公式アカウントのキャラ付けをやっていくんです。
松田:「もやし」もそうだし、「ヒモ男」もそうです。私のヒモ男って今、ツイッターのフォロワーが7000人くらいいます。やっぱりツイートって効果があるんです。ユーザーがすごく反応してくれたりして。
— ユーザーからの反応は嬉しいですね!フォロワーはどうやって増やしたんですか?
田辺:ゲーム内に導線をちゃんと置いておくことです。あとは本当に地道につぶやき続けるのも大切ですかね。
— ユーザーからの反応は、継続率を上げる施策にも活用してるんですか?
松田:もちろん!ツイッターでエゴサーチめっちゃしますよ、リリース直後は特に。
田辺:後に「もやししゃちょー」のモチーフとなる「はじめしゃちょー」がもやしと呼ばれているのを知ったのも、「はじめしゃちょー」のファンが「もやしびと」のリプライを「はじめしゃちょー」にいっぱい送っていたのも、エゴサーチで僕らは知ったんです。
— そういうことだったんですね。
松田:最初、よくわかんなかったんです。なんで「はじめしゃちょー」に「もやしもやし」ってみんな言っているんだろうと思って調べてみたら、「はじめしゃちょー」のことを「もやし」ってファンは呼んでいるんだと知ったんです。そうして、「はじめしゃちょー」ともやしコラボできたら面白いなって、なんとなく言っていた妄想がホントに実現したんです。
— なるほど、ユーザーの反応から新しいゲームの企画が生まれたんですね!
版権(IP)モノのアプリは、そのIPが好きな人間が提案に行く
— 「もやししゃちょー」での、「はじめしゃちょー」以外のIP(版権)は、どうやって引っ張ってきてるんですか?
松田:一番の前提は、そのIPを好きな人が動きます。なんかすごい戦略があってやっているというよりは、このIPが好き。このIPでゲーム作りたいな。じゃぁ、提案に行ってきます。そんな感じですね。
ちょうどおそ松さんのゲームが出ますけど、それもきっかけは、プロデューサーの女の子が「おそ松女子」だったことにあります。おそ松さんのゲームを作れたらどんなに幸せか、みたいなこと言うから、実際にエイベックスさんに行ってゲーム作りましょうよと提案に行きました。そういうところから始まるんですよね。
— そうなんですね!そのIPが好きな人が提案すると説得力もありそうです。
松田:やっぱり、もちろん戦略とかも大事だけど、得意だったり、そのモチーフが好きな人が関わるのが1番いいなと思ってます。
— 荒い粒度でも企画をたくさん出して、エッジが際立つ企画をそこから選ぶこと。IP系ならそのIPに愛がある人が関わることが大切なんですね。イベントで売上を下げないことの大切さもわかりました。引き続き、お話を聞かせてください!
(続く)

あやんせ
渋谷で働くIT女子。メディアコンサルタントとしてデベロッパーさんのお力になれるよう日々奔走中。海が大好き。twitterアカウント