漫画アプリ“後発組”だからできる、かつてない機能とプロモーション。「マンガほっと」に聞く編集部の舞台裏 | あやんせが行く!Vol.11


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第11回目となる今回は、6月1日にリリースされたばかりの漫画アプリ「マンガほっと」を運営する、株式会社コアミックスの花田健さんと、イマジニア株式会社の横山新吾さんにお話を伺いました。

今回お話を伺った人

花田健 株式会社コアミックス 電子戦略部次長
横山新吾 イマジニア株式会社 モバイルメディア事業本部 スマホビジネス事業部チーフ

「マンガほっと」とは?

株式会社コアミックスとイマジニア株式会社がタッグを組み、6月1日にリリースされた漫画アプリ。連載陣には、北条司先生の「エンジェル・ハート」や、原哲夫先生の「北斗の拳」のほか、新進気鋭の作家の作品を毎日更新中。

◎マンガほっとwebサイト ⇒ http://mangahot.jp/

– 早速ですが、「マンガほっと」がどのように生まれたのかをお聞きしたいです!

花田健さん(以下、花田):リリースの構想はもともとあって、コアミックスは「WEBコミック ぜにょん」も、雑誌「月刊コミックZENON」も制作しているので、次はアプリを作りたいと考えていたんです。

そんな時に共通の知人からイマジニアさんとコアミックスを繋げてもらったのが1年前の話ですね。数回ミーティングをして、最終的に「お互いの長所が発揮できるようなアプリを」ということで、「作家との距離が日本で一番近いアプリ」をテーマに動き出しました。

ラフやプロットが見える、ファンには嬉しい執筆の“舞台裏”

– 「作家との距離が日本で一番近いアプリ」、それはどのように実現していくのでしょうか?

花田:まずは編集部しか持っていない、描きおろしのイラストやキャラデザインのラフ、落書きなどを連載作品に織り交ぜながら掲載する予定です。

たとえば、映画にもなった「この世界の片隅に」という漫画の作者、こうの史代先生が「ヒジヤマさん」という連載を担当して下さっているんですが、プロットからネーム、下書き、完成原稿まで、完成に至るまでの一連の過程を公開していく予定です。

もしかしたら「完成品だけでいいよ」という反応になってしまうかもしれない。でも、他にこういうことを試しているアプリは無いのでチャレンジしてみようと。

– これは今までのコミックアプリに無かった要素ですね!他にはどのような試みがあるんですか?

横山新吾さん(以下、横山):あとは、タイムラインというコーナーを設けています。作家さんとの打ち合わせ風景やインタビュー、グッズ、イベント情報などを掲載しています。タイムラインはユーザーの趣味趣向に合わせて、あらかじめ、欲しい情報の種類と好きなマンガのジャンルが設定できて、流れてくる情報を選べるのが特徴です。

タイムラインの運営は僕たちでやっていて、毎日、編集部の方々から画像や裏話が専用のLINEグループに届いています。それを1つ1つ記事化して掲載しているんです。

他にも、新進気鋭の作家さんには、なぜ漫画家を目指したのか、デビューまでの経緯などをインタビューして公開する予定です。

– ラフやプロットの要素もそうですが、ファンの方には嬉しいサービスですね!

花田:マンガほっとに掲載されている作品の裏側や、編集と作家さんのやりとりは僕たちにしか見せられないものですよね。

Kindleを使って既存の作品をリリースする方がリスクはないですけど、それじゃ面白くないじゃないですか。読者さんにウケるかどうかは数字が決めるとして、今までの漫画アプリになかったものをやらなければ、新しく立ち上げる理由はないと思っています。

アプリに掲載するから評価される作品がきっとある

– なるほど。次は掲載される漫画についてお聞きしたいと思います。「マンガほっと」はどのようなラインナップでアプリを展開していくのでしょうか?

花田:マンガほっとは新作を中心に公開する一方で、「北斗の拳」や「シティハンター」などの過去の名作を織り交ぜていく方向で考えています。

実は、アプリは「完結した旧作」と相性がいいなと考えていました。「全巻購入で〇〇パーセント割引」というモデルの方が読者も買いやすいですし、新作が1巻だけ売れるより、旧作が20巻売れる方が売り上げはいい。

でも、そのモデルだとこれから読まれていく作品が作れないんです。新作が生まれないと業界全体が縮小してしまう。

僕たちは今20巻売れる作品ではなく、将来20巻売れる作品を作りたい。その役割をかつては紙の雑誌が担っていましたが、近年のアプリの勢いを見ると、それが可能なんじゃないかって。

横山:もともと少年漫画って、本屋で立ち読みされていたものですよね。そこから学校で口コミになって、単行本を買ったり、貸し借りしたりという流れがあったと思います。アプリでも、名作や人気作品で読者を集めて新しい作品に触れてもらったり、単行本を買ってもらうという流れは作れると思います。

コアミックスさんとご一緒するにあたり、すべての連載作品と完結作品を弊社メンバー全員で読ませていただきましたが、巻数が少ない作品でも、大変面白い作品がたくさんあることを知りました。

手軽に読めるアプリとして配信することで、多くの漫画ファンにこれらの作品をお届けできると感じました。

イマジニアの役割は、「アプリUI」「プロモーション」「デジタルコンテンツ展開」といったノウハウを活かして、「1人でも多くの読者さんの目に触れる漫画」や「長く連載していただける漫画」を増やすことだと考えています。

– 手軽に読めるアプリだから人目に触れる作品も増えそうですね。

花田:手軽さもそうですけれど、読者さんに対して紙媒体やWEB媒体とは違うコミュニケーションができると思っています。

コアミックスの代表・堀江が社内の人間に「傾け(かぶけ)」、つまり「本気で遊べ」とよく言うんです。縮こまるな。挑戦しろ。自分たちと読者さんが本気で面白いと思えるものを出せ、と。

そんな社風ですから、「なんだこれ?」と思われるような、新しいこともしやすいんです。

温故知新。かつての少年誌をリスペクトしたプロモーション

花田:マンガほっとでは事前登録をしていますけど、今までの漫画アプリではあまり前例がありません。ほかにも大相撲の化粧まわしや懸賞幕を使った取り組みを行いましたが、業界関係者からは変なことやってるよねと噂になっていますね(笑)

横山:マンガほっとはマンガアプリ市場の中では、とてつもない後発隊です。
出版社さんのアプリやプラットフォームアプリがすでに何百万とダウンロードされている中で、「このアプリはちょっと他とは違うな、面白いな、変なことやってるな」というイメージを刷り込んでいかないと。そのためのプロモーションのひとつが、大相撲とのタイアップでした。

花田:もともと大相撲とのタイアップは、マンガほっとで企画している「稀勢の里物語(きせのさとものがたり)」と連動したもの。横綱、稀勢の里の半世を漫画にしたもので、かつての少年誌でよくあった「著名人タイアップ企画」なんです。

かつての少年誌では、野球選手の王貞治さんとか、長嶋茂雄さんの物語とかを掲載していましたよね。「知ってる人の話だから」という動機で読んでもらえば、そこから他の漫画も読んでもらえる。かつては雑誌内に読み切りなどで必ずあったモデルなんですよ。

– 私も「モーニング娘。物語」とか見てました。(笑)

花田:そういうモデルです(笑)
出版社からすると、読み切りって単行本にしづらいし、捨て原稿になってしまうことが多いので、資金的な余裕がないと制作しづらいんです。雑誌が売れている時は余力があったけれど、今は紙媒体の漫画の発行部数も減ってきている。

余力がないから、手堅く売れる作品が作りやすくて、クセの強い作品が作りづらいというジレンマに陥ってます。

他社さんの漫画アプリを見ると好調な読み切りも多いので、マンガほっとでは違う施策も試してみたいと思って、かつての少年誌のテクニックを使ってみました。

現実とリンクした「アプリ×〇〇」で、様々なユーザーにリーチさせる

– ほかに、ここは新しいと言えるプロモーションはありますか?

横山:オフラインでは、連載作品を原作にした舞台やテレビ、キャラクターカフェなどのイベントでプロモーションをおこなっていく予定です。

アプリダウンロード数などに直結して換算できるものではありませんが、上手に連携させられたらいいなと思っていて。

舞台は単体で成り立たせるのでなく、見に来てくれた方にアプリのポイントを特典としてプレゼントしたり、キャラクターカフェの来場者がアプリをダウンロードしてくれたらデザートを提供したり。そんなことを構想していますね。

– なるほど、現実に飛び出していくわけですね。

横山:リアルな場とアプリを組み合わせることでプロモーションできるユーザーさんも多いと思うんです。

過去に紙媒体でおこなわれてきたプロモーションに、アプリやwebだからできることを組み合わせれば色々な層にリーチできます。

それで言うとLINEスタンプやLINEきせかえなどもそのひとつですね。北条司先生の「エンジェル・ハート」ではLINE着せ替えをリリースしていますし、プロモーションとして、単行本の発売日に合わせてデジタルコンテンツを出していくことを考えています。

– そういった試みを行うのは、社風の影響が強いのでしょうか?

花田:それもありますけど、新人作家さんに夢を与えたいと思うんです。出張編集部と言って、合同面接のようなイベントがあるんですよ。編集部がいくつか集まって、そこに作家さんの卵が持ち込みをする。

僕らも参加するんですが、作家さんがアプリのGANMAさんやcomicoさんに並ぶ方が増えていたんです。持ち込みをするなら、作家さんとしてもチャンスがあると思える場所に行きたいじゃないですか。

アプリを育てることで、そこが新しい媒体になって作家さんや編集者が育つ場所が作れます。僕らも作家さんに選んでもらえるようにならなくてはいけません。

– 最後に2017年内の目標を聞かせていただけますか?

花田:この2社が組んでパイプをフルに使ったからこそ、というものが作りたいと思っています。僕たちは、すでに何百万DLされているアプリが多数ある中に飛び込んで、勝負していかないといけない。

そういう環境の中で、ずっと新作を生み出していきたいですね。ある程度利益を出さないと回っていかないので、大変なことだとは思うのですが、イマジニアさんもタッグを組んでくれていますし。

横山:もちろん尽力しますよ!単に新作を出しても誰もマンガほっとに気付いてくれないので、色々なプロモーションを構想中です。最終的には653万DLを超えたいですね。「653万」という数字は、コアミックスさんの代表・堀江さんが週刊少年ジャンプの編集長をされていた時の最高部数です。

– これからの動向が楽しみです!今日はマンガほっとの裏側やプロモーション方法が聞けて勉強になりました。ありがとうございました!


まんがほっと
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あやんせ
渋谷で働くIT女子。メディアコンサルタントとしてデベロッパーさんのお力になれるよう日々奔走中。もうすぐ夏、海が大好き。
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