
中国で爆発的ヒットを記録しているゲームアプリ「旅かえる」。日本や北米で累計2,500万ダウンロードのスマッシュヒットを記録した「ねこあつめ」に続く、株式会社ヒットポイントの作品です。10〜30代の女性を中心に人気を集め、リリースからわずか3ヶ月で3,200万ダウンロードを超えました。
その開発の中心人物は、ゲームアプリ開発に携わってまだ2年半のキャリアながら、企画立案からリリースまでを担当した上村真裕子さん。ヒットを生み出した背景にはどんな想いがあったのか、その開発秘話を聞きました。
今回お話を伺った人

ヒットアプリを連発する、アプリ開発体制とは

――2017年11月にリリースされたた「旅かえる」ですが、企画立案からすべて、上村さんが手掛けているのですか?
上村真裕子さん(以下上村):企画立案や進行など、基本的な部分はだいたい担当させていただいています。企画に関しては、私が考えた具体案を叩き台としてみんなに叩いてもらい、それを基に作り上げていくかたちです。
――上村さんは、いつ頃からゲームの企画のお仕事をされているのでしょうか。
上村:ヒットポイントに入社したのは2年半前です。特にゲーム関係の勉強をしていたわけではなく、普通の4年生大学を卒業後、一般企業に就職しました。その後、転職しようと求人を見ていたところ、弊社がプランナーの募集をしており、ゲームが好きだったので応募して、縁あって入社しております。
――ふむふむ。御社のアプリの開発体制についてお伺いしたいです!
上村:弊社は現状社員が30名くらいいるのですが、チーム制を採用しており、各チームが制作したゲームの権限を持っています。名古屋、京都に複数チームがあり、企画から開発、アプリの運営まで全てをチームの中で行います。
私の所属するチームは現在6名で、「旅かえる」はプロデューサー、プランナー、プログラマ、デザイナーの4名でつくりました。
「ねこあつめ」もわたしたちのチームから生まれたアプリです。
――すごい、大ヒットを生み出すチームですね!
開発者の“好きなもの“を詰め込んだ「旅かえる」

――どのような時に「旅かえる」のコンセプトを思い付いたのですか?
上村:私が旅行が大好きで、自分が今までに行ったところ、これから行きたいところを詰め込んだゲームをつくろうと思いました。
ねこあつめは、猫好きなチームのリーダー発案の企画なのですが、ねこあるあるをゲームの中に詰め込んでいて、ねこ好きが楽しめるという点でユーザー様からご好評いただきました。つくる人が好きなもので、趣味や好みを反映できるゲームは楽しんでいただけるのかもしれません。
――ゲームの中に出てくるおみやげも、実際の観光地に売っているものですごくリアルですよね。苦労したのはどんな点でしょうか?
上村:まさにそこで、観光地やおみやげをリンクさせるために勉強したり、資料集めに時間がかかりました。また、お客様には見えない情報なのですが、ゲーム内部に地図みたいなものがありまして、そこと関連性を持たせるのが大変で。遠い場所に旅に出ている時は、おのずと帰ってくるのに時間がかかるんです。この関連付けの作業に、1ヶ月くらいはかかりましたね。

――「旅かえる」の開発に要した全体の期間はどれくらいですか?
上村:10ヶ月ほどです。本当は半年くらいで作るつもりだったのですが、仕様の変更があったりして思いのほか時間がかかりました。
中国で異例の大ヒット!アプリの海外展開について

――「旅かえる」って今どのくらいダウンロードされているのでしょうか?ネットニュースにもなっているように、多くが中国の方だとお聞きしました。
上村:おかげさまでご好評いただいており、累計ダウンロード数が3,200万のうち、9割以上が中国のお客様です。中国のテレビで取り上げられたとき、一日で数百万DLくらいされて、驚きました。問い合わせも1日で数千件を超えたりしたので、わたし一人でカスタマーサポートをやっていたのですが、そのときは対応しきれなくなりましたね。
――どのように中国でバズらせたのでしょうか?
上村:特に広告などは出しておらず、AppStoreとGoogle Playのフィーチャーに何度か取り上げていただいたのみです。
何がヒットしたか、という具体的な要素は見つかっていないんですけれど、中国の文化と密接した雰囲気を持っていたり、「かえる」という言葉が中国語の「子供」と音が似ていたりするらしく、そのような複数の条件が絡み合って受け入れていただけたのではないかと考えています。
家にいたら早くどこかに行け、という気持ちになるけれど、帰ってくるまでは「早く帰ってこないかな」と思い、自分の子供のように色々と想像しているという声を、中国の方からいただいています。
――中国でゲームアプリをリリースするのはハードルが高い気がするのですが、何か特別なことをされたのでしょうか。
上村:実はAndroid市場のほうでは、まだ公式配信していないんです。iOSのほうは、配信地域に中国を入れたのみで、特にローカライズなどはしていない状態でした。先ほど9割のお客様が中国の方と申し上げたのも、AppStoreのみの数値でダウンロードの95%が中国だからです。
――御社は海外展開も視野にいれて、アプリを製作されているのでしょうか。
上村:海外展開を見据えてゲームを製作しているわけではなく、最初は日本のユーザーさんに向けてアプリを製作しています。「旅かえる」も、「ねこあつめ」が北米で評価いただいたので、多少は海外ユーザーさんも見込めるかな?くらいでした。
ゲーム自体も日本向けの内容になっていますし、「日本あるある」みたいなものもたくさん含めているので、中国でリリースすることはそんなに意識していませんでした。なので本当に予想外の反響で、嬉しい誤算です。
生活の妨げにならないアプリを作る、「お客様第一」の考え方

――「ねこあつめ」を作った会社が新しいゲームアプリを作るとなると、やはりインパクトがありますよね。ファンの方もたくさんいらっしゃると思うのですが、「ねこあつめ」や「旅かえる」の経験から、ヒットアプリを生み出す秘訣ってありますか?
上村:どうなんでしょう(笑)。チームで一番大切にしていることは、「お客様第一」に考えることです。基本的には、仕事や家事の合間の時間で楽しんでもらえて、お客様の生活の妨げにならないように作っています。企業的なやり方としては正しくないかもしれませんが、課金のタイミングはゲームがだいぶ完成したタイミングで後から考えますし、広告も邪魔にならないように見たい人だけが見られる仕様にしています。
内容に納得いかなければ、スケジュールを後ろ倒しにしてやり直します。遊んでくれる人に恥じないものをリリースしたいという意識を強くもっています。
――会社として利益を追うことよりも、本当にユーザーさんに楽しんで遊んで欲しいという思いがとても伝わってきます。「お客様第一」の考え方、素敵ですね!
上村:ゲームを広めてくれるのはお客様自信で、ヒットするのは自分たちだけの力では決してないと思っています。お客様が愛着を持って遊んでくださることで、どんどんコンテンツが広がって行くので、ゲームのクオリティを高めることを大切にしています。

――私的にすごく上手いなと思ったのが、プッシュ通知の頻度です。ゲームアプリのプッシュ通知ってかなりの頻度で来るイメージなのですが、「旅かえる」はひと味違いますよね。
上村:「旅かえる」は放置系のゲームなんですけれど、待たせる時間が3、4日くらいかかることもあり極端に長いんです。普通に考えたら、その間にアンインストールされるだろうと、開発中いろいろな方に言われました。
正直、あまり通知も出したくなかったのですが、でも出さないとゲームが本当に放置されてしまうので、渋々出させて。「かえる」が帰って来る時にだけ通知が来るようにしたんです。
――この通知があると、「あっ」てなりますよね。思い出したくらいのタイミングで帰って来るので、頻度が丁度良い。ユーザーさんのことを考えて作っているんだなというのが、伝わってきます。
ユーザーと二人三脚で、末長く愛されるコンテンツを作る

――今後はどういったゲームを出したいとか、何かイメージはありますか?
上村:現状は「ねこあつめ」や「旅かえる」のアップデートや今後の計画が優先になっています。それが落ち着いてから、しばらく先にはなるかもしれませんが次のゲームを出したいです。うちのチームは、どちらかと言えばかわいいキャラクターをメインに据えることが上手なのかなと自負しているので、おそらくはそういった路線で行くんじゃないかと。
「ねこあつめ」「旅かえる」をプレイしているお客様に、引き続き楽しんでいただける内容にしていきたいですね。ただ、放置ゲームにこだわるつもりもあまりないので、それ以外のジャンルで出していくかもしれません。
――動物縛り……とかでもなく?(笑)
上村:特にそういうわけではないんですけれど、今の所そうなっていますね……。皆可愛いものが好きなので。
――なるほど、楽しみにしています! 最後に、ゲームのユーザーさんに何かメッセージはありますか?
上村:お客様には感謝を伝えたいです。「旅かえる」や「ねこあつめ」をプレイしてくださって、本当にありがとうございます。どちらもお客様に広げていただいたコンテンツだと本気で思っています。これからはゲーム以外でもIPとしてコンテンツをどんどん広げていき、末長くお楽しみいただけるように今後も開発を頑張っていきますので、末長くお付き合いいただけると嬉しいです。
――ファンの方にとって、すごく嬉しいコメントだと思います。ヒットの秘訣は「お客様第一」の考え方がとても大きいのではないかと思いました。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
◎株式会社ヒットポイント(http://www.hit-point.co.jp/)
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