プロモーションなしで3,500万ダウンロード超え。ゾンビカメラアプリが全世界でウケた理由をTyffon社に聞いてきました!| あやんせが行くVol.5

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株式会社Zucksにて広告営業ガールをしている“あやんせ”が、アプリデベロッパーを訪ねるコーナー「あやんせが行く!」。

第5回目となる今回は、1枚の写真からリアルな3Dソンビに変身できる「ゾンビブース」や、ゾンビSNS「NECRODIA」をリリースしているデベロッパー、ティフォン株式会社の深澤さんにお話を伺いました!

今回お話を伺った人

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深澤 研

1979年生まれ。2002年に横浜国立大学を卒業後、サン・マイクロシステムズに入社しシステムエンジニアとして勤務。同社を退社後、絵画・CGによる映像制作を開始。短編映像作品『Have we ever met before?』は、第33回モントリオール国際ニューシネマフェスティバルなどで上映。2010年にはパリのバルザック博物館にて絵画展を行う。その後、モーションポートレート株式会社勤務を経て、2011年ティフォン株式会社を設立。

子どもの頃からゾンビが大好き。好きなコトをアプリにしたら大ヒットにつながった!

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— オフィスに入ったらいきなりゾンビの飛び出す絵本があったり、ここはゾンビだらけですね(笑)。そもそも深澤さんがゾンビに注目したきっかけは何ですか?

深澤:4、5歳のときに親に東京ディズニーランドへ連れていってもらったのですが、お化け屋敷のアトラクションであるホーンテッドマンションを体験したんです。それが自分にとっては衝撃的な体験で、「ああいうものを作りたい」と思ったんですね。

— それがきっかけで怖いものにハマったんですね!

深澤:はい。それから頭蓋骨ばっかり描くような子どもになって(笑)。小学生のときには、骸骨の石膏像を親に買ってもらいました。それがこれ。(冒頭の画像で深澤さんが持ってるもの)

— すごい!物持ちいいですね!(笑)

深澤:頭蓋骨と同じくゾンビも好きになったんですが、やっぱりそれもおそらくホーンテッドマンションの影響で、小さい頃からひたすら頭蓋骨やゾンビを描いていました。

— 好きがこうじてゾンビアプリが生まれたわけですね。

深澤:そうですね。「ゾンビブース」のアイデアが生まれたのは、前に務めていたモーションポートレートで、顔写真を動かすアプリを見たとき。止まってるものが動き出す技術にすごく興味を持ちました。

これって、動かないはずの死体が動き出すゾンビと同じですよね(笑)。

そこに共通点を感じたんです。顔写真を動かす技術を使って動き出すゾンビを見せられたら面白いだろうなって。

— すごーい!繋がってるなあ、全部。好きなことがビジネスに発展していったんですね。

深澤:いえ、ビジネスとしてはあまり考えていませんでした。ゾンビを作ったら楽しいかなぐらいしか思ってないっというか(笑)。ただ、もともと好きだからこそ、ゾンビの表現のディテールにはかなりこだわって作りました。結果としてそれがウケたっていう感じですね。

プロモーションは何もせずに3,500万ダウンロードを達成!

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— ゾンビ変身アプリの「ゾンビブース」のダウンロード数はどれくらいですか?

深澤:「ゾンビブース1」と「2」を合わせて3,500万は超えています。

— 3,500万!すごい!!アクティブ率も高いのですか?

深澤:アクティブ率はそこまででもないです。「ゾンビブース」は、ゾンビに変身するという最初のインパクトを楽しむアプリ。毎日使うようなものではないんですね。

そこでアクティブ率を向上させようと思って、2016年10月にゾンビに変身して楽しむSNSアプリ「NECRODIA」を出しました。リテンションを高めるために「NECRODIA」ではソーシャル機能を付けています。
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— 「ゾンビブース」シリーズや「NECRODIA」でのユーザ獲得施策はどういうものでしょうか?

深澤:なにもやってないです(笑)。

— え!何もしていないんですか!

深澤:たぶんタイミングがよかったのだと思います。「ゾンビブース」を出したのは2010年。ほかに顔写真を変身させるアプリって、そんなにはなかった時代です。その中でも写真がゾンビ化するというアプリはおそらく世界で初めてで、それが面白かったのでしょう。一気に広がりました。“怖いもの見たさ”なのか、怖いものって好かれるんですね。

その後、「ゾンビブース」が注目されて結構有名になったので、続編の「ゾンビブース2」では、「ゾンビブース」と連携させて両方持っていると使えるスペシャルアイテムを用意しました。特別なゾンビの素材に変身できるアイテムです。

— なるほど、そうして続編にもユーザーを誘導させたんですね!

深澤:はい。誘導は大規模なものではないけれど、仕掛けとしては十分に効果がある。プロモーションにはお金は使ってないですね。

「NECRODIA」でも、「ゾンビブース2」からの誘導をしています。過去の作品から流していくのは有効ですね。

–ちなみに時期によってダウンロード数の違い、波はありますか?

深澤:やっぱりハロウィンにはインストール数が伸びるんですよ。急に数倍とか、多い時は前日の10倍になることもあります。

その勢いでアクティブユーザーが増えて、しばらくするとじりじり落ちてくるんだけど、またハロウィンになるとインストール数とアクティブユーザーが伸びる。というサイクルを毎年繰り返しています。

「ゾンビブース2」なんて出してもう4年ぐらい経ちますけど、ハロウィン前後はいまだに1日2万ダウンロードを超えています。

— 1日2万!App StoreやGoogle Playでフィーチャーされたりしてるんですか?

深澤:2016年のハロウィンはどうだったんでしょうね。たぶんどこかの国ではされたんでしょうね。

アジア初!ディズニーアクセラレーターに採択。ディズニーから出資とコネクションを得られた利点は大きい

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— そういえば、御社はディズニーアクセラレーターから出資と支援を受けてらっしゃるそうですね。どういうきっかけで出資を受けることになったのですか?

深澤:たまたまサンフランシスコに行ったときに、現地にいる友人から、ディズニーアクセラレーターっていうのがスタートアップを募集しているよと聞いたのがきっかけです。ただ、その時点で締め切りまで2週間ぐらいしかなかったんですけど(笑)。

— ぎりぎりですね(笑)。

深澤:しかも、アクセラレーターっていうのがどんなものなのかも知らずに、ただ「ディズニー」っていうところだけにすごく惹かれて申し込んだんです。先ほど言ったように『ホーンテッドマンション』にすごく影響を受けてたので、ディズニーとはいつか何かしたいなっていう思いがあったのです。

— 思いが叶ったんですね!

深澤:ええ。応募してみたらディズニーアクセラレーターに受かって、ディズニーアクセラレーターへの参加条件としてディズニーとTechstarsから出資を受けることになりました。そのために、1週間ぐらいで急きょ米国法人を作り、ディズニーアクセラレーターに参加した、という流れです。

— すごいスピード感ですね!ディズニーアクセラレーターの選考はどういう流れになるのでしょうか?

深澤:結構提出物がありましたね。まず映像を二つ提出します。プロダクト紹介と創業者紹介のビデオを2本作りました、あとは、質問票に回答して提出です。これが第一次審査ですね。創業者紹介ビデオでは普通に自己紹介してるうちに徐々にゾンビ化するという演出を入れたのですが、「こんな映像送ってくるところは今までなくて一番面白かった」と後でアクセラレータの人に言われました。

— ディズニーアクセラレーターへ応募した時は、もう「ゾンビブース」は出されてたんでしょうか?

深澤:そうですね、「ゾンビブース2」も出していました。シリーズ累計ダウンロード数が2,000万を超えていたころで。この実績も評価されたのだろうと思います。

— ディズニーアクセラレーターに採択されるのはやっぱり狭き門ですか?

深澤:応募総数は1,000社以上で採択されるのが10社ですね。

— すごい!全世界の1%の中に御社は残ったんですね!

深澤:そうですね。今はもう第3回目が終わったところで、今まで30社選ばれてるんですけど、アジアからは私達だけです。

— アジアで1社だけ!採択されることによる特典みたいなのはあるんでしょうか?

深澤:まず出資を受けられるという点。あとは、クラウドサーバーのAWSを、2万ドル分無料で使えたり、Google App Engineも10万ドル分タダで使えるというような特典がたくさんあります。

— アプリデベロッパーにとっては夢のような特典ですね!

深澤:そういう特典に加えて、ディズニーアクセラレーターはネットワークを活かしていろいろな人や企業を紹介してくれるのもメリットとして大きいですね。

もちろん、ディズニーアクセラレーターの場合は一番大きなコネクションはディズニーですけど(笑)。普通のアクセラレーターのメリット+ディズニーとのネットワークが得られるのが利点です。

— それは大きい!日本からどんどんディズニーアクセラレーターに採択されるスタートアップが出てくるといいですね!

複合現実の技術で、自分の隣にゾンビがいる世界を作る!

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— 「ゾンビブース」に「NECRODIA」。次はどんな展開を考えていますか?

深澤:具体的な内容はお話できないんですけど、今、私たちはMR(Mixed Reality 複合現実)の世界に入っていこうと思っています。

— MRって、VR(Virtual Reality/仮想現実)やAR(Augmented Reality/拡張現実)とはまた違ったものなんですか?

深澤:VRとARが融合されたものがMRです。VRは、CGで作られた世界に完全に没入するタイプ。ARは、ポケモンGOみたいに現実の中に付加的にCGを置くものです。

複合現実であるMRになるとそれが融合して進化し、CGと現実の見分けがつかなくなります。

— 例えば、目の前にゾンビがいるみたいな世界がつくれるってことですか?!

深澤:そうですね。自分の隣にゾンビが一緒に座っていたり、それが襲い掛かってきたりする体験を実際の空間の中で味わえるんです。

どんな場所でも『ウォーキング・デッド』の世界になってしまうみたいなことができるでしょうね。

— ひぇ~体験してみたい!今後は軸足をアプリからMRに移すんですか?

深澤:両軸でいきます。「NECRODIA」も2016年10月に出したばかりですから、こちらも今後力を入れて、どんどんブラッシュアップしていきます。

— MR×ゾンビってめちゃめちゃ相性が良さそうですね!

深澤:小さい頃に影響を受けた『ホーンテッド・マンション』が実現しているように、自分の世界観を現実の中に作りたいという夢があって、MR技術を使えばその夢を叶えられると思っています。

作りたいものを作る。それが一番の幸せ

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— 深澤さんにとって、アプリデベロッパーとしてのハッピーは何ですか?

深澤:そうですね。とにかく作りたいものを作ることが幸せです。

— 芸術家みたい!

深澤:昔はアーティストになりたいと思ってました。小さい頃からレオナルド・ダ・ヴィンチに憧れていたのは、彼の多彩な面に惹かれていたからなのかもしれません。

彼は、エンジニアリングもできるし、サイエンスの研究もし、絵もうまい。さらに祝祭の演出までやったり。そういった全てを一人でこなす総合的なところに、小学生のとき「すごいな」「そういうことがやりたいな」と惹かれました。今の時代でそうしたことを実現するには起業家になるのが一番適していると思います。

— 映画も作ったり、アプリも手がけ、さらに新領域まで手を伸ばそうとしている深澤さんは、すでにダ・ヴィンチみたいですね!笑

深澤:いえいえ、いろいろなことを高い次元で実現するレオナルド・ダ・ヴィンチには足元にも及ばないですよ。まだまだです。

— そうしたいろいろなチャレンジを続けるティフォンという会社をひとことでいうと?

深澤:”Enchant Your World”

これが、私たちのヴィジョンです。直訳すると「あなたの世界に魔法をかける」という意味ですが、一人ひとりの日常を魔法のような体験にしていきたいと考えています。

— 深澤さんが創り出すゾンビワールドは、まさに魔法にかけられたような体験ですね。

深澤:「ゾンビブース」シリーズもこれからやろうとしているMRもそうです。日常的な風景が魔法にかけられて非日常になる。

そうして一人ひとりの世界が変化して、その人だけの、ありうるかもしれない別の現実を感じられる体験を作っていきたいと思っています。プロダクトの全てが「あなたの世界に魔法をかける」というヴィジョンに繋がるようにやっていこうとしています。

— 「世界に魔法をかける」ことで、大ヒットにつながったんですね!!

深澤:そうかもしれませんね(笑)。もちろん先ほどお話したように、怖いものが好きだったからゾンビの表現にこだわれて、こだわりのゾンビ表現だったからこそ多くの人に刺さったというのが一番大きい理由でしょうけれど。

自分が大好きなことをテーマにアプリを作るのが一番良いかもしれませんね。

— 深澤さんが好きなことを形にされていて、世の中に受け入れられていることが素晴らしいですね。私もとても刺激になりました!本日は、ありがとうございました!

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あやんせ

渋谷で働くIT女子。メディアコンサルタントとしてデベロッパーさんのお力になれるよう日々奔走中。寒くなっても海が好き。

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— 私たちゾンビになってますけど。

深澤:取材中に、どうやら魔法にかかったようですね(笑)。